令和5年度査察概要 101件を告発、その脱税総額は89億円
2024/07/04
国税庁はこのほど、令和5年度における「査察の概要」を公表した。
それによると、査察の処理件数は151件で、そのうち101件を告発した。脱税額の総額は約120億円、告発した査察事案に係る脱税総額は約89億円だった。1件当たりの脱税額は総額分で7900万円、告発分は8800万円。告発率は66.91%と前年度の74.1%より7.2ポイント減少したが、引続き高水準となった。
令和5年度の重点事案と位置付けた消費税事案の告発件数は27件。そのうち、国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い「消費税不正受還付事案」については16件を告発。その不正受還付額は4億5400万円となり、前年度の13億4700万円から約9億円減少した。
たとえば、同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造し、架空の課税仕入れおよび架空の輸出免税売上を計上するほか、輸出物品販売場の許可を受けたコンビエンスストアにおいて、虚偽のパスポート情報を用いて免税商品を販売したと装い、架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受けた(受けようとした)事案などが報告されている。
そのほかの重点事案として「無申告事案」は16件を告発。そのうち、不正行為はないものの、故意に申告書を提出しないで税を免れた単純無申告ほ脱事案は11件だった。
たとえば、アフィリエイト事業により収入を得ていたにもかかわらず、虚偽のコンサルティング契約書を準備するなどして所得を隠匿した上で、法人税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、法人税を免れていた事案や、所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、出版社からの原稿料や印税収入などに係る所得税を免れていた事案などがある。
「国際事案」では25件を告発。虚偽の株式譲渡契約書を作成して、自己が所有する未公開株式を自らが主宰する海外法人へ譲渡したと装い、未公開株式の譲渡収入の一部を海外法人の収入であるとして、所得税を免れていた。
そのほか、時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対して積極的に取り組んでいる。たとえば、脱税請負人が、脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税とうたって、広く納税者を勧誘し、納税者らが当該スキームを利用して法人税および消費税を免れていたケース。インターネット上の物品の転売やそのノウハウの指南を業とする者が、架空の経費の計上や売上を除外することで、自身の所得税および主宰法人の法人税を免れていたケースなどがある。
令和5年度中に一審判決が言い渡された件数は83件で、そのすべてが有罪判決となっており、そのうち9人に実刑判決が出されている。実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独に係るものが懲役4年、ほかの犯罪と併合されたもので懲役6年だった。
たとえば、輸出物品販売場の許可を受けたドラッグストアにおいて、外国人旅行者に化粧品などを販売したように装い、架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、または受けようとした法人の代表者に懲役4年、不正加担者に懲役3年の実刑判決が出された。また、同不正加担者が関与した別法人の代表者について、同様の方法で不正に消費税の還付を受けるとともに、不正に消費税を免れていたとして懲役2年の実刑判決が出されている。